2011年

6月

28日

役員報酬を使った節税とお金を残す方法を徹底解説!

ある程度儲かると、個人事業主としてやるより株式会社などの法人を作って商売をやるほうが節税になるということを聞いたことがありませんか?

 

法人の方が、税金が安くなる場合が多いのは事実ですが、その仕組を理解している人は案外少ないのではないかと思います。

 

しかし、それではもったいないです!仕組みを理解した上で、納税額が最小になるようにして、お金を残したくはありませんか?そこで、役員報酬を調整することで納税額が最小になる仕組み、そしてお金を残す方法について解説します。

法人と個人の課税方法の違いから生じる節税の仕組みとは?

役員報酬を調整することで納税額が最小になる仕組みとは、一言で言うと法人と個人の課税方法の違いを利用した方法です。

 

第一に、法人税と所得税の税率の違いです。法人の利益に対して課税されるのは、法人税、住民税、事業税ですが税率は原則として一定です。ただし、資本金が1億円以下の会社の場合、税金の対象となる所得(決算書の利益に税務上の調整額を加減したもの)が800万円以下の部分については軽減措置があります。分かりやすくするために細かい計算を省くと、法人については、所得が800万円以下の部分については約25%、800万円を超える部分については約40%の法人税・住民税・事業税の負担が必要です。

 

一方、役員個人の役員報酬の給与所得に対して課税されるのは、所得税と住民税です。こちらは所得税・住民税合計で最低15%から最高50%まで累進的に税率が上がります。所得の高い人は法人の方が税率が低くなるので有利になります。

 

しかし、税率の違いだけでは一部の高額所得者を除いて余り効果がありませんよね。実はもっと大きな違いがあるのです。それは、「給与所得控除」という概算の控除額を利用したものです。

 

これは所得計算の違いによるものです。法人の場合、収益から実際に支払った費用を差し引いた金額が利益となります。一方個人の給与所得の場合は、役員報酬としてもらった金額から「給与所得控除」という概算の控除を差し引いて所得を計算します。

 

つまり、会社のオーナーで役員である人は役員報酬をもらうことで、会社で「実学の経費」を差し引いたあとに、その役員報酬から「概算の経費」をさらに控除することができるのです。

 

図を使って説明しましょう。

 

役員報酬 節税

 

 

図1の例で、個人事業を営んでいて、奥さんと子供2人の扶養家族がいたとすると個人の税額はざっと50万円ほどになります。

 

また、法人で役員報酬をとっていなかったとすると、法人の税額は130万円ほどになると思います。

 

 

図2の例が法人で、役員報酬を500万円とっていたとすると、法人の利益はゼロですから、税額は均等割の7万円。

 

役員個人にかかる所得税は、図1と同じ家族構成だとすると、税額は20万円ほどになります。

 

 

この給与所得から各種控除を引いた差額に税率をかけて税額を計算します。

図1と図2を比較すると、個人事業から法人になることでトータルの税額がほぼ半減します。もちろん、法人にすると社会保険料などの経費も増えるので、例のようにはいきませんが、節税が図れるのは間違いありません。

 

また、法人の場合も役員報酬の額を調整して、法人の利益を調整することでトータルの税額を小さくすることができるのです。

 

この仕組を使った節税は、家族を法人の役員にすることでさらには大きくなります。家族で役員報酬を分散してとることで、給与所得控除という概算控除額が人数分多くなりますし、各人の税率も下がるからです。

 

最適な役員報酬額の決定には利益予想が不可欠

これだけ見ると、「何だ!簡単に節税できるんじゃないか!?」と思われるかもしれませんが、この節税方法には制約があります。税務当局もこのようなことを野放しにしておくはずがありませんよね。

 

平成18年度の税制改正で、役員報酬の額を変えられるのは事業年度開始の日から3ヶ月以内だけ、会計期間中の役員報酬は定期的に同額の支給した場合にしか経費に認めないという取り扱いとなりました。

 

役員報酬の支給額を変更できるのは期首3ヶ月以内だけで、原則として変更はできないということは、その期の利益を予測することが必要になります。利益が変わってしまえば節税上最適な役員報酬額も変わってしまうからです。

 

とはいっても中小企業が期首の時点でその期の利益を予測するのは難しいでしょう。しかし、業種やその会社の特性によって、利益予測のぶれを多少なりとも抑える方法があります。それは、「利益変更の大きな月を会計期間の最初に持ってくる」ということです。具体的にいうと売上の大きな月を期首にすればいいのです。役員報酬の変更は、事業年度開始から3ヶ月以内の株主総会の決議によります。実際の支給はその翌月ですから、最長で事業年度が始まって4ヶ月目の支給分から新たな役員報酬額にすればいいわけです。売上の大きな月を会計期間の最初に持ってくれば、その後の年間利益の予測が立てやすくなり、最適な役員報酬額の決定がしやすくなります。

 

資金の蓄積は、その資金を使うときのこと等も考えて全体のバランスを図る

以上のことをまとめると、資金の蓄積、内部留保を最大化するためには、会社・個人を通じた税負担が最小になるようにそれぞれの分配額を計算することが必要だということが分かります。具体的には、会社・個人を一体として税負担が最小になる役員報酬額を設定します。

 

内部留保を「作り出す」段階では、これを実践していけばいいわけです。しかし、内部留保は使うときのこと等も考慮する必要があります。

 

例えば、税金が最小になるようにと会社の利益のほとんどを役員報酬として分配すると、会社にお金が残らないため、代表者個人の資金を会社に補填する必要が出てきます。これは会社の決算書上は代表者からの「短期借入金」となります。金融機関はこの「短期借入金」を「実質的に自己資本に加えられる資金」として評価しますので、代表者からの借入が増えても、金融機関からの評価は下がらないことが多いです。また、個人にお金が必要になって、会社からお金を引き出しても、借入金の返済として処理できるため、個人の税金が増えることはありません。

 

一方、税額が最小になるようにと、極端に役員報酬を低くすると、代表者が必要なお金を会社から引き出した場合、決算書上会社から代表者個人への「短期貸付金」となることがあります。この「短期貸付金」が決算書上にあると金融機関の評価は下がります。なぜなら代表者への貸付は回収可能性がほとんどない資産と見られるからです。これでは、税額が最適でも、資金調達が難しくなるため、健全とは言えません。

 

以上のことから、個人で蓄積した資金は個人でも会社でも利用可、会社で蓄積した資金は会社でのみ利用可という性質があることが分かります。資金の利用の自由度に差があるわけです。

 

事業承継の場面においても、この資金利用の自由度を考える必要があります。事業承継の場面では、会社の内部留保、個人で蓄積した財産の両方が財産として評価され、相続税が課せられる場合があります。しかし、遺産を分割する場面では、「分けやすさ」ということも考慮しなければいけません。どういうことかというと、会社の株式は経営の安定を考えると後継者以外の人に分けるのは適切ではないからです。一方個人で蓄積した現金であれば、後継者以外の人とのバランスをとるような分割が可能になります。

 

資金利用の自由度の他にも考慮することはたくさんあります。税額が最適になるからと会社をずっと赤字にしてしまうと、当然銀行の評価は下がり、借入が受けられなくなることもあります。また「短期借入金」が実質的に返済不能なほど過剰に積み上がると、相続の場面でその「短期借入金」を決算書上の金額で評価しなくてはならないことや、そのような「短期借入金」を相続人間でどう分割するのかという問題が出てきます。また、役員報酬を極端に下げると、代表者個人が住宅ローンを組む時などに悪影響が出ます。

 

要するに全体のバランスを考える必要があるわけです。何が最適かはそれぞれの事情によって異なりますから、一度ご相談いただければと思います。

 

まとめ

  • 法人と個人の課税方法の違いを利用して、税額が最小となる最適な役員報酬を設定することが、内部留保をするための近道。
  • 役員報酬は期首にしか変更できないため、利益の予想が重要になる。
  • 内部留保は、資金利用の自由度、事業承継なども考慮して、全体のバランスを図ることが重要になる。
問い合わせ