役員報酬の支払いには注意が必要!! - 税務調査で問題にならないためのポイントとは? -

会社が役員(社長含む)に対して支払う給与には、税法上様々な制限がなされており、規定に従わないと給与が経費にならず、会社に税金がかかる可能性があります。その制限は、原則として経費にはできない、ただし条件に合致していれば経費に認めてあげますよというような厳しいものです。

 

役員報酬の支払いについて、注意すべき点を解説します。

役員に支払う報酬にはなぜ制限が設けられているのか

何故役員報酬の支払いにこのような制限があるかというと、中小企業では役員の給与は自由に変えることができ、会社の利益を操作できてしまうからです。

 

例えば、決算の月に思いがけず利益が200万円出る見込みになったとします。社長が、「税金払うのももったいないし、最後の月の自分の給与を200万増やしちゃおう」とか「自分に賞与を200万円払おう」と決め、実際に支払ったとすると、利益は200万円 - 200万円でゼロになってしまいます。

 

これでは誰も税金を支払わなくなってしまいますよね。このようなことを認めないために、役員報酬には様々な制限が設けられているというわけです。

役員報酬が経費に認められるための条件とは?

それでは、役員報酬を経費として認めてもらうにはどのような条件をクリアすればいいのでしょうか?

 

それは、「毎月同じ額を支払う」というものです。

 

1ヶ月に1回の支給ということですので、原則として、賞与を支給したり、年に1回という形で支給しても経費として認めてもらえません。賞与の支給や年1回の支給を経費に認めてもらう方法もありますが、税務署へ届出書を提出する必要があるなど手続きが煩雑で、効果も余りないものですのでおすすめできません。

 

また、同額を支払うということですので、歩合給や業績連動給与といった毎月の支給額が変動するものは経費に認めてもらえません。

 

それでは、一度決めてしまったら、支給額を変更できないかというとそんなことはありません。しかし、ここでも条件が決められています。

 

それは、「役員給与の支給額を変更できるのは、事業年度開始の日から3ヶ月以内」という条件です。

 

例えば4/1~3/31という事業年度の会社であれば、4/1~6/30までの期間でなければ、役員給与の支給額を変更することはできないということです。

 

これ以外にも変更できる場合がありますが、役員の地位や職務内容の大幅な変更があった場合、病気などで療養する場合、不祥事の責任をとって減俸する場合など特別なことが発生したときだけです。

 

また、役員給与の変更はたとえ減額であっても、事業年度開始の日から3ヶ月以内でなければ認められません。平成18年度以前であれば、下げるのなら大丈夫と言われていましたが、法改正で条件が厳しくなっていますので注意が必要です。

 

役員給与の減額は、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情がある場合に限られます。これも一時的な資金繰りの都合や赤字になるのを避けるとか業績が目標に達しなかったからといったことでは認められませんので注意が必要です。

 

以上をまとめると、役員給与について覚えていただきたいことは2つです。

 

  1. 毎月同額の支給
  2. 役員給与を変更できるのは、事業年度開始の日から3ヶ月以内

 

これを図で表すと、以下のようなものが経費として認められる例となります。

 

役員報酬説明図解

役員報酬の変更に必要な手続きとは?

それでは、役員報酬の変更にはどんな手続きが必要なのでしょうか。

 

会社が役員の報酬を決める場合、会社法の規定に従うことになります。会社法第361条では、役員の報酬は定款に定めるか、定めてない場合は株主総会の決議によって決めるとしています。

 

ほとんどの会社の定款には役員の報酬は株主総会の決議によって定めると規定されているため、株主総会を開いて決議するという手続きが必要になるわけです。

 

そして、税務上は、この株主総会で決議したという証拠として、「株主総会の議事録」を作成する必要があるのです。

 

えっ!?うちの会社で株主総会なんて開いたことないよ!という方も多いと思いますが、その場合でも、議事録は必ず作っておきましょう。最近は税務調査でも、調査官が株主総会の議事録を確認することが増えています。また、社会保険の算定基礎届を出す場合にも、この議事録が必要になる場合があります。

まとめ

  • 役員給与には、利益操作防止のため厳しい制限がある。
  • 役員給与が経費に認められるのは、原則毎月同額支払う場合だけ。
  • 役員給与の変更は、原則事業年度の開始から3ヶ月以内だけ
  • 役員給与を変更した証拠書類として株主総会の議事録を作成する必要がある。